厳島に散ゆ~あんなに愛していたのに~

 ……。


 「父上、話が違います」


 毛利家では元就の長男・隆元(たかもと)が元就に語気を強めていた。


 「大内家内の乱れを正すために、御屋形様に退任いただくという話ではなかったのですか? 御屋形様と義尊さまには隠居・出家していただくのみで、命を頂戴することなど有り得ないと聞いておりました。それゆえ協力を申し出たにもかかわらず」


 元就はもしかすると、流れの中で御屋形様が命を失われることは予期していたかもしれない。


 だが今でも御屋形様をお慕いする隆元は、私に騙されたと激怒していた。


 「大内家のためとの大義名分だったにもかかわらず、この有様。元より陶隆房の野心に、我々も利用されただけなのでは?」


 「隆元」


 「御屋形様を殺めたてまつるとは露知らず、私はなんて罪深い野心に手を貸してしまったのだろう」


 隆元は悔やみに悔やんだ。


 「陶隆房。この恨みは絶対に忘れない。いつの日にかきっと御屋形様の無念をお晴らししてみせる」


 大内家を全て引き継いだも同然の私には、毛利ごときではすぐには手を出せない。


 力を蓄えた暁には必ず復讐すると、その日から毛利隆元は私に恨みを募らせ続けた。