……死の直前に別々に脱出させた、公家一行と嫡男義尊さま。


 まず公家一行はその日のうちに発見され捕らえられ、たちまち皆殺しにされた。


 御屋形様が重用なさった公家たちは、兵士など民衆にとっては迷惑以外の何者でもなかった上に。


 大内家の財産を食いつぶし、民の生活を困窮させる要因となる害虫に過ぎなかった。


 御屋形様がご自害なされ、支配者のいなくなったこの周防国は今や無秩序状態。


 混乱に乗じて大寧寺から落ち延びていこうとした公家たちは、暴徒の餌食となった。


 かつて関白の地位にあった二条尹房(にじょう ただふさ)。


 娘がかの有名な武田信玄に嫁いでいる三条公頼(さんじょう きんより)。


 おさいの方の実父、小槻伊治(おつき これはる)。


 大内家当主の正妻の座に納まった娘の地位を笠に着て、高慢な振る舞いをくり返した没落公家もまた、暴徒の手にかかり命を落とした。


 そして持明院基規(じみょういん もとのり)。


 大内家内での贅沢三昧やりたい放題の積み重ねは、兵士たちにひどく憎まれており。


 かなり残虐な殺され方をしたと伝わっている。