続いて冷泉隆豊どのの辞世の句を目にした。


 「みもや立つ 雲も煙も なか空に 誘ひし風の 末も残らず」


 靄が立ち込めた、雲や煙が漂う空の中では、誘う風が全てを消し去る。


 末も残らず。


 すえ。


 陶……。


 「!」


 私は思わず、手紙を叩き捨ててしまった。


 これは冷泉どのが私に向け、最期に残された呪いの言葉だ。


 御屋形様に刃を向いた私を呪いながら、冷泉どのは炎の中で命を絶たれたのだ。


 御屋形様が腹を召された際、介錯を務めたのが冷泉どのと聞く。


 その後、寺中に火を放ち。


 寺を取り囲んだ反乱軍の兵たちに鬼神のように襲い掛かり、かなりの犠牲を与えたものの多勢に無勢。


 最期の時が訪れたことを悟り、燃え盛る炎の中に消えていったという。


 炎の勢いはすさまじく、御屋形様と冷泉どののご遺体は燃え尽きてしまったのか。


 ついに灰の中から見つけ出すことは叶わなかった。


 そのことが私に、さらなる恐怖心を植え付けた。


 御屋形様は……実は生きておられるのでは?


 ご遺体が見つかっていない限り、その疑惑は完全には消せない。


 もしかして冷泉どの共々生き延びて……隙を窺い続けているのでは?


 私に復讐するために。