「討つ人も 討たるる人も もろともに 如露亦如電応作如是観(にょろやくにょでんおうさにょぜかん)」


 辞世の句の後半部分には、漢字が並んでいた。


 「何だこれは。呪文か?」


 覗き込んだ周囲の者たちが、首をかしげる。


 意味が分からないどころか、読めない者も少なくないようだ。


 「露のように、または雷のように儚いもの。それが人の世」


 御屋形様が残した辞世の句の意味を、私は幾度となくかみしめた。


 討つ私も、討たれた御屋形様も同様に、儚い運命……。


 教養があり、風流を愛された御屋形様らしく、仏教の教えに由来する理(ことわり)を最期の言葉として残された。


 誰よりもお慕いし、誰よりもお恨み申し上げた御屋形様からの、最後の言葉。


 さよなら……。