「見限るなど、そのような」


 「いや、隆房ばかりではない。当主としての資格を失った私など、他の重臣たちにも見限られて当然だったのだ」


 「私は見限ってなどおりません」


 「冷泉」


 「最期までお供いたします」


 「隆房はそなたのことを慕っておる。今投降すれば命は奪うまい」


 「そのような選択肢、もはや私には存在しません」


 冷泉どのは御屋形様さまからの投降勧告を、きっぱりと拒絶なさった。


 そして覚悟を固められた。


 すでにこの大寧寺も、軍勢に取り囲まれていたのだ。


 御屋形様が静かに最期の時をお迎えになられようとしていることを悟り、無用に攻め入ることはなく黙って見守り続けていた。


 大内家当主として、せめて最期の時はご立派なものとして差し上げようと。