***


 「隆房(たかふさ)、隆房、どこにおる」


 「こちらにおります」


 隣の部屋で、後輩の小姓たちに指示を下していた私は、御屋形様の呼ぶ声に気付いて急いで駆け寄った。


 「お前の元服祝いに、朝廷より従五位下(じゅごいのげ)の位を賜った。程なく朝廷より正式な使者が、この周防に参るであろう」


 「ありがたき幸せにございます」


 すでに私は元服を済ませ、陶隆房(すえ たかふさ)と名乗っていた。


 朝廷より賜るこの「従五位下」の位。


 五位より上は貴族階級、六位より下はそれ以下。


 御屋形様は私の地位を、貴族階級にまで高めてくれた。


 そして元服と同時に頂戴した、「隆房」の名。


 「隆」の字は御屋形様よりいただいたもの、「房」の字は父より受け継いだもの。


 私の身にも心にも、そして名前にも御屋形様が刻まれた。


 全てにおいて私は、御屋形様に支配されている。


 そして御屋形様もまた……常に私を必要としている。