厳島に散ゆ~あんなに愛していたのに~

 「これはどうしたことです」


 「なんだ、藪から棒に」


 「……私が戦場でこの身を危険に晒している間、御屋形様はぬけぬけとこの佞臣を呼び戻し、高みの見物をなさっていたのですか!」


 取り巻きの公家たちは、私の剣幕に恐れおののいている。


 「何を大袈裟な。今回の戦は最初から勝利が約束されていた。配下の毛利の手前、形だけ兵を出したにすぎぬ」


 御屋形様は冷静さを保ったまま、私の抗議を一蹴なさる。


 「戦に絶対などという言葉は存在しません! いつどこで敵が待ち構えているか知れません。私とて……御屋形様とて、油断していればいつ敵に首を取られるか分かったものではありません!」


 「陶どの。やはり気がふれられたのか。無礼極まりない」


 私と一度も目を合わせず、知らんぷりをしていた相良がようやく口を開いた。


 九州に左遷された折、出家の形を取ったため、その髪はまだ短いまま。


 茶坊主のような髪型をしていた。