厳島に散ゆ~あんなに愛していたのに~

 「陶どの……!」


 冷泉どのの制止も振り切って。


 私は鎧を身にまとったまま、御屋形様の元へと急いだ。


 まさに乱入。


 館内で取り巻きの公家たちとくつろいでいた御屋形様は、驚いて振り返る。


 怪訝な表情を浮かべる公家たち。


 (気がふれたか)


 ささやきが私の耳にも届く。


 「隆房、なんだその格好は」


 薄汚れた鎧姿のまま現れた私を、御屋形様は咎める。


 「先に連絡をよこせば、迎えに出たのに」


 以前のような情熱的な交わりが絶えて久しいが、代々大内家を支える陶家の当主がここ大内家に出入りの折は。


 御屋形様は必ず迎えに出たり、見送ったりするのが昔からのしきたりだった。


 だが私は御屋形様が迎えにお出にならないうちに、館に飛び込んだ。


 もはや一刻も早く会いたかったからではない。


 私がいない間に御屋形様があの相良を九州から呼び戻したと聞いて、私は嫉妬に狂っていた。