厳島に散ゆ~あんなに愛していたのに~

 尼子の勢力を備後の地から駆逐することに成功。


 私は意気揚々と山口へと引き上げていった。


 山口の大内館、御屋形様の元へ到着する直前のことだった。


 近郊まで迎えに出てきた同僚・冷泉隆豊(れいぜい たかとよ)どのの様子がおかしかった。


 「……御屋形様に何か?」


 「それが……」


 「……何だって?」


 冷泉どのが意を決して打ち明けた内容は、私には信じがたいものだった。


 私の留守中に御屋形様はなんと、あの男を呼び戻していたという。


 恋敵・相良武任を九州から……。


 私が戦場で身動きを取れないでいる間に、何ということを。


 予想外の裏切りに、私の目の前は真っ暗になった。


 少し前までは、早く御屋形様に勝利の報告を差し上げたくて、この胸のときめきは止まらないほどだったのに……!