厳島に散ゆ~あんなに愛していたのに~

 「……西国一の美将にあるのみならず、まるで軍神のごときご活躍ぶり」


 備後から無事尼子の勢力を駆逐させた私に、毛利元就はくすぐったくなるほどの賛辞を述べた。


 「陶どのがおられる限りは、備後そして我が安芸の国にも未来永劫、平穏な日々が約束されます」


 これで尼子が完全にあきらめるとは考えられないが、相当痛めつけておいたので、当面は大内家の勢力範囲内には進出して来ないだろう。


 「……御屋形様はもう二度と、戦をなさらないのかと危惧しておりました」


 元就は御屋形様のことに言及した。


 月山富田城での敗戦後、自堕落な日々に身をやつしていた大内家当主の噂は、周辺諸国にも当然広まっていた。


 大内家傘下の豪族たち、とりわけ毛利のように尼子家との緩衝地帯に領地を有する者どもは、万が一尼子が攻め込んできた時、頼るべき大内が救援の手を差し伸べてくれないのでは……と心の底から心配していたようだ。


 「心配には及ばない。御屋形様を惑わせる佞臣どもはすでに消え失せた。私が御屋形様のそばにお仕えする限り、配下の者たちの安全は保障して見せる」


 元就に約束した。