厳島に散ゆ~あんなに愛していたのに~

 ……。


 「これは陶どの。陶どのが援軍に駆けつけてくだされたら、もう勝ち戦も同然」


 私は御屋形様の命により軍勢を率い、備後で陣を構える毛利元就の元へ程なく合流。


 数年来元就は尼子配下の者どもに手こずっていたが、大内の大軍が到着すると形勢は優位に立った。


 右手に刀、左手には手綱。


 馬上の私は久々の戦場で、水を得た魚のように駆け回る。


 土埃が舞う中、血の匂いに満ちた、死と背中合わせの戦場。


 そのような不吉な地であれど、戦場こそが私が生きる場所であると再確認できる。


 私は生まれながらに、戦場に生きることを運命づけられていた。


 御屋形様をお守りするために。


 たとえどれだけの敵を、この手に掛けようとも。