厳島に散ゆ~あんなに愛していたのに~

 「この任務を委ねられるのは、お前しかおらぬ」


 ……私は御屋形様に懇願されると弱い。


 「他ならぬ御屋形様の……ご命令とあらば」


 散々避けられ冷たくされ、ないがしろにされた長い日々が私をすり減らした。


 かつての愛された日々が失われたことを認められず、いつか再び御屋形様に愛されることを願い、耐え続けたのだった。


 しかし長くつらい日々が、私を捻じ曲げてしまった。


 もし再び御屋形様に頼りにされる時が訪れようとも、冷たく突き放してしまおうと。


 その時になって私の存在の大きさに気付き後悔なさっても、手遅れであることを知らしめようと。


 だが何もかも無駄な抵抗だった。


 私は御屋形様にすがられると、何もかも許してしまった。


 突っぱねようとあんなにも固く決意していたのに、御屋形様の優しい微笑みが、私のかたくなな決意を木っ端微塵に打ち砕く。