だがやはり、乳幼児の元服は異例なものである。


 「今後も御屋形様には、男子誕生の可能性が残されています。何も急いで亀童丸さまを擁立なさらずとも」


 「……どういうことだ」


 「亀童丸さまは次期当主として、相応しくないかと」


 「何?」


 「大内家に仕える、誰もが存じております! 亀童丸さまは御屋形様の御子でないとの噂を!」


 「!」


 政務室のざわつきは一層高まった。


 さすがに相良を止める者も現れた。


 ……なぜ相良は、そこまで御屋形様に申したのだろう。


 寵愛を笠に着て、調子に乗っての暴走か。


 それとも御屋形様のことを心配するあまり、皆の代表をして言いにくいことを口にしたのか。


 ……分からない。


 御屋形様も不快に思われたようで、相良には謹慎処分が申し渡された。


 その後隠居を申し出て、出身地である九州に身を引いたという……。