「……あのさ……」


 私が言葉に詰まっていると、その男の子が口を開いた。


「やっぱり……」


『やっぱり』……なんだろう……?


「このまま学校、休まない?」


 …………。


「え……?」


 その男の子の言葉から少し経って、私は、ようやく反応した。

 ようやく反応したけれど、少し動揺してしまっているせいか、それ以上言葉が出てこない。


 だって、いきなりそんなこと……。

 いきなりそんなことを言われて驚かないはずがない。


 確かに私自身は学校を休みたい気持ちではあるけれど。

 まさか男の子から、『学校、休まない?』と言われるなんて。


 私は男の子が言った言葉に、どう対応すればいいのか、わからなく困ってしまった。

 わからなくて頭の中が上手く働かない。

 どうしよう、こういうときは、どう対応すれば……。
 そう思っていると……。


「そうだ、このまま学校、休んじゃおう」


 今度は疑問形じゃないっ。
 はっきりと『休んじゃおう』と言っているっ。

 聞き間違いじゃないっ。
 今、はっきりと言った。
『休んじゃおう』って……。

 …………。
 って。
 え……。
 ……‼
 えっ、えっ、えっ。
 どっ……どうしようっ。

 男の子が『学校、休んじゃおう』って言っているっ。
 えっ、えっ、えっ。
 私は一体どうすればっ。


 私がそんな感じで心の中で大慌てしていると。


「じゃあ、行こう」


 私の今の心の中を全く知らないその男の子がそう言って、まだ何も返事をしていない私の腕を掴んだ。

 私の腕を掴んだその男の子は、私を連れて駅とは反対の方向へ歩き出した。