「本当のことを言うとね、心に残ってたのは白いワンピースの少女」

 彼の秘密めかした声に私は固まる。

「再会した日、白い振袖を着てただろう? あの姿を見て、どうしても捕まえなくてはと思ったんだ」

 嬉しい。
 でも、嬉しくない。
 過去の自分にヤキモチ妬いちゃうなんて。
 あ。

「……護孝さんの気持ちがわかりました」

 声がトゲトゲしちゃう。

「ひかる?」

「過去より、今の私を好きでいてください」

 はああ、とため息をつかれてしまった。
 護孝さんと同じことを言ったのに、なんで?

「……戸籍を手に入れる前に、体も欲しい。なのに親父さんの前で告白なんて、ひかるは酷い女だな」

 冗談に見せかけた彼の本音に、体がびくつく。
 そっか。
 気持ちを受け入れたら、その先は。

「今日は逃してあげるが。……二度はないからな?」

「はい……」

 いいよ。
 私も貴方とその先に待っているものを感じたいから。
 貴方と一緒に、どこまでも。
 甘い恫喝を受けいれた。

「ひかる、まだいる? あらあら、お父さんたら寝ちゃって」

 二人の唇が互いを求めようとしたとき、母が顔をだした。

 なにくわない表情で拳一個分くらい離れた護孝さんの隣で、私の顔だけがきっと茹だったように真っ赤だったろうな。