「自信なんか、なくて構わない」
「っ、」

 耳元でささやかれる言葉は、しっかりとした熱をもつ太陽みたい。
 熱は私を温める。

「死ぬまでひかるを抱きしめて、一生好きだって言ってやるから」

 太陽は私を暴いてしまう。
 負のスパイラルを、護孝さんの言葉が壊していく。

「俺のこと、嫌いか?」

 耳を食まれ、掠れた声と熱い声を吹きこまれる。

「……わたし、は」

 恋人と別れて以来、男性に近寄られるのも触れられるのも怖かった。

 嫌いだとなおさらで、悪寒がしてくる。
 傍にいても大丈夫なのは、家族だけだ。

 ……この人に触られるのは怖くない。

「いえ」
「だったら、好きか?」

 甘くたずねられて、私は自分の心に聞いてみる。

 この人と出かけるのは嫌じゃない。
 この人に大事にされるのも。

 いつのまにか、訪れを心待ちにしている。

 手を握られたり、体のどこかが触れ合えば、心は甘くときめく。
 笑いかけられ、見つめられれば多幸感で体がはじけそうになる。

 でも。
 自分の気持ちがわからない。
 私は、ふるふると頭を横に振った。

「護孝さんと一緒にいるのは楽しいです。……でも、ドキドキしてしまうのは、のぼせてしまっているだけじゃないかと」

「わからなくてもいいよ……今はね」

 護孝さんは私の頭を抱え込み、甘くささやく。
 体にぞくぞくしたものがはしる。 

「ひかるが俺を好きになるまで……、待つから」 

 切なそうな、乞うような声に、私の裡なるものが甘く満たされていく。

「他の誰にも目を向けさせるようなことはしないし、誰かに奪われるつもりもないけどね」

「………………多分。護孝さんでなければ、一生結婚しないと思います」

 小さな声だったが、ありがとうと護孝さんは言ってくれた。