【改訂版】CEOは溺愛妻を杜に隠してる

「これに乗ろう」

 街中にある観覧車に釘付けになる。

「大っきい……」

 日本で見たことがない形。近未来的でガラスとコンクリートで出来た円柱を横倒しにしたようなゴンドラ。

「プラーター公園の観覧車のゴンドラも大きかったなぁ」
「……ってどこでしたっけ?」

「所在地はウイーン。国でいうとオーストリアだな」
「……もしかして、行ったことあります?」

 機内でなにげなく護孝さんのパスポートを見たら、スタンプだらけだった。

「ん」

 こともなげに首肯されて、ぱちぱちと瞬きをした。

「うちはホテルを経営してるだろ? 子供の頃から親に連れられて、国内外のホテルに泊まってるんだ」

 高校からは学業の合間にホテルでバイトをしていたという。
 大学を卒業したあとは海外のホテルを渡り歩いていたらしい。

「ベッドを整えるのも、銀器を磨くのも出来るよ。あと、フォークとスプーンをトングがわりに使える」

「すごい、おうちですね」

 経営するだけで、よしとしないんだ。

「経営者だからね。『木を見て森を見ず』は許されない。難しいけど『森を見て木を見ず』もなるべくしたくない。現場を知らないと、スタッフの不満を見逃してしまう。それはホスピタリティの低下に直結してしまうから」

 彼の真剣な目に、だからこの人は尊敬できるのだと思った。

「ひかるもそうだろう?」 

 問われて、どうかなと少し考えてから、うなずく。
 護孝さんに抱き寄せられた。

「だから、ひかるを尊敬してるんだ」

 夫も同じことを想ってくれたのだと、心があると言われる部位がじんわりと温かくなる。

「なにも心配しなくていい。ひかるの隣には俺がいる。隠岐の当主夫人として、俺の横で笑っていてくれればいいんだ」

 それだけでは済まされないだろう。
 堂々と好きな人の隣に立っていられるよう、学ぼうと思った。