【改訂版】CEOは溺愛妻を杜に隠してる

 寝室のドアを開けて、息を呑んだ。 
 白い壁がどこまでも続いている。
 中央には四柱のあるキングサイズのベッド。
 磨き上げた床に敷かれた暗青色の絨毯。
 ゆったりとした、落ち着いた空間である。 

「好き?」 

 投げられた言葉にドキリとなる。
 振り向けば、護孝さんが私をじっとみつめている。 

 会った瞬間から、美しい人だと思った。
 洗練された仕草も飽きさせない会話も、大人だと思う。
 鋭く怜悧な視線にもゾクゾクしてしまうが、笑いかけてくれると、とても嬉しい。 

「好き、です……」

 無意識だった。
 
「良かった。シンガポールのホテルの中では、この部屋が一番好きなんだ」  

 照れくさそうな声だった。 

「あ」  

 部屋のことだったんだ。気づいて一人、恥ずかしくなる。

 護孝さんはそんな私を見つめていたが、ニヤリと悪い笑みを浮かべ、いきなり抱き上げた。すたすたと歩き始める。 

「わっ」
「バスルームもゴージャスだよ」 

「自分で歩きます!」
「駄目。この一週間はひかるを甘やかす」

「でも……、甘やかし過ぎはよくないです」
「なんで?」

 護孝さんがピタリと歩みをとめ、私の目をのぞきこんでくる。

「際限なく甘えちゃいそうで」  

 私がボソッと呟いた言葉に護孝さんは破顔した。

「もっと甘えていいんだよ。俺はひかるを愛するために生まれてきたんだから」 

 なんってこというのだ、この人は!
 まだ、『旦那様の色気にあてられて死にかけました』保険入ってないっ。

「でも、俺が疲れたときは甘えさせてくれる?」
「当たり前です!」

 人って字は二人が支えあってる字なんだから!
 ……の割には、私が一方的によりかかってるけど。

「ん」

 護孝さんはそれは蕩けそうな微笑みをむけてくれた。
 ちゅ、と触れるだけのキスをされる。私もお返しにキス。
 結局、横抱きにされたままキスしあってバスルームに到着して……彼の艶めいた懇願と、自身の甘い声をたっぷり聞くことになった。