【改訂版】CEOは溺愛妻を杜に隠してる

 専用車で空港内を移動する。
 目の前に現れた小型ながら優美な形の飛行機を見て、固まった。

「護孝さん、これ……」

 指してる指が震えてしまう。
 護孝さんは私が口をぱくぱくしているのを楽しそうに眺めている。

「もしかしてひかる、プライベートジェットって初めて見る?」

 やっぱりー!

「ひかると出会うまで、プライベートを仕事より優先したことはなかった」

 感慨深げに呟いたあと、護孝さんは私の目をのぞきこんできた。

「俺達は新婚だろ? なのに互いに忙しいし、ひかると愛し合う時間が圧倒的に足りない。人目を憚らずイチャイチャしたいから、考えられる限りアップグレードしておいた」

 夫は、にっこりと笑ったものだ。
 不穏な台詞に私は真っ赤になり、ついで呆然となった。

 私だって、多賀見家のおかげで贅沢とはどんなものか薄らと知っていたつもりだったし、夫の財力がなんとなくケタ違いなのも感じていたが、想像以上……!



「機内で何が食べたい? シンガポールまで七時間あるから一回はきちんとした食事をとろうか」

 懐石料理に、中華にフレンチ、イタリアンのフルコースが用意されているらしい。
 ……機内でフルコース?

「シェフも選べる」

 待って!
 私達のためにシェフまで乗ってるってこと?

「デザート、いやメインディッシュはひかるだけど」 
 
 で、私がメイン? 口を開く前に機先を制されてしまう。 

「あまり量があると、もたれるから。……もちろん『運動』して消化はするけど」 

 夫の目が妖しくまたたく。
 朝なのに色気全開だー!
 スタッフに囲まれているなか、夜の雰囲気にさせられてどうしろと?

 挙動不審になった私を見て、いじめ過ぎたことに気づいたのだろう、護孝さんが優しい顔になる。

「今回はお互いの趣味と実益を兼ねてるんだ。ひかるには、チャンギ空港内のバタフライ・ガーデンやシンガポール植物園。奇をてらったところでガーデンズ・バイ・ザ・ベイ」

 庭であろう名称にワクワクする。

「ホテルは俺のお気に入りを予約してある。ひかるも気に入ってくれると嬉しいな」 

 あとは観光客らしくシンガポールフライヤーに乗ってハイティーをして、オーチャード・ロードをひやかして……と楽しそうに話す夫が、可愛く見えてしまう。 

 護孝さんを見つめている私に気づいた彼は、表情をあらためた。 

「一生に一度のハネムーンだから、ひかるの記憶に残るようなものにしたい」

「……既に一生忘れられなくなりそうです」

 プライベートジェットなんて。
 私、ファーストクラスも夢のまた夢だと思ってたのに、一気にグレードアップしてしまった……。

「勿論、再会した記念日やひかるの誕生日、バレンタインにクリスマスは期待していてくれ」

 護孝さんは綺麗なウインクをしてみせた。
 私。
 旦那様の色気にあてられて、心臓発作を起こしたときの保証をしてくれる、生命保険に加入したほうがいいかもしれない。