【改訂版】CEOは溺愛妻を杜に隠してる

 目が覚めたのは、顔に降り注ぐ熱いほどの日差しのせいだった。

 ぼんやりしていた視界が次第にクリアになっていくと、目の前に夫になった人の顔があった。 
 熱くて甘い時間を与えられ、夜明け近くにお互いの腕の中で眠ったことを思い出す。

 通った鼻筋。
 まつ毛が頬に触れそうに長い。
 綺麗な人は目を閉じても綺麗なのだと思う。

 一族や会社を背負い、ときに傲岸あるいは冷徹な光を宿す瞳は今は隠されている。

 この人が目を瞑った姿を見たのは、きっと私一人だけ。
 そう考えたら、愛おしさとが込み上げてきた。

 すっかり目が冴えてしまった私は、体にからみついていた夫の腕の中からそっと抜け出すと、壁一面の窓に近寄った。

 カーテンを閉めなかった窓は、境界線が曖昧になりそうな、青い空と碧い海だった。

 遠くにはタンカーが浮かんでいる。
 空には白煙をなびかせて飛行機が上昇していた。
 飛行機はかなり大きく見えるのに、音がまったく聞こえないのは優れた防音機能を備えた窓なのだろう。

「わあ……」

 押えたつもりだったが、耳に届いてしまったのだろう。
 護孝さんが掛布をもって起きだしてきて、後ろからくるんでくれる。 

「おはよう、奥さん」
「おはようございます、旦那様」

 夫婦になって初めての朝。

「……あの」

 硬いモノがヒップにあたっている。

「夜の海を眺めながら乱れてたひかるは、セクシーで綺麗だったな、と」 

 夫が耳を食みながら熱くささやいてくる。
 昨晩の痴態を思いだし、体が火照る。

「朝の光の中で抱かれるひかるは、どれだけ美しいんだろうと思ったら興奮してきた」
「護孝さん」

 抗議しようと後ろを向いた唇を、覆いかぶさってきた彼の唇で塞がれる。

 ――私達がチェックアウトしたのは、日が高くなってからだった。
 焦っている私と違い、護孝さんはのんびりしている。

「予想通り寝坊したなぁ。けれと出入国審査に時間を取られないから、ディナーには余裕で間に合うよ」
 
「え?」