「運命? 林檎? ん?」
「そういうことが書いてある本を読んだことがあるんだ」
学校の図書室にある本じゃない。
それはもっと昔に、ふとした瞬間に手に取った本。
もしかしたらどこかに置かれていたものだったかもしれないし、あるいは本屋さんで立ち読みをした中に含まれていたものかもしれない。
本のタイトルも曖昧で、どうして林檎の匂いがするのか、その理由さえ覚えていない。
でも私は絶対にどこかで見たのだ。
〝運命の人に出逢えると、林檎の匂いがする〟
私はまだ出逢ったことがない。
初恋である宇津見くんからもそんな匂いはしない。
でもロマンチックで、ファンタジーで、例え誰かが作った話だとしても私は信じたいし、彼にも知ってほしいと思った。



