あの日に置いてきた初恋の話




宇津見くんは誰のことを見ているんだろうか。

そんなこと、私が(さぐ)っていいわけがない。

でも彼はきっと、誰にも言えないようなことを抱えている。

わからないけれど、わかる。

だって私もずっと宇津見くんのことを見てきた。

綺麗な男の子。笑顔が可愛い人。優しくてぽかぽかオーラが漂ってる人。

それだけで、彼に片思いをする理由は十分に揃っていた。


「あのね、宇津見くんっ」

「うん?」

「えっと……えっとね」

多分きっと、彼とふたりきりで話せる機会なんて滅多にない。

もしかしたらこれが最後になるかもしれない。

ここで私の想いをぶつけたところで、宇津見くんへの気持ちは半分も伝えられないし、失恋してしまった彼の心をこれ以上騒がせることもしたくない。

だから、だから……。


「運命の人に会うと林檎の匂いがするらしいの!」

お腹から出した声は、自分でも驚くほど辺りに通った。