謙太郎は苦笑しながら、手を広げた。 中指を来いというように動かす。 響は謙太郎に抱きついた。 ひざの上に横座りにされ、抱き込まれた。 「怒ってても、泣いてても、楽しくても、何でもいいから、俺を閉ざすな。何でもいいから、話してよ。黙んなよ」 響の頬や耳が、押し当てている謙太郎の胸で、彼の心臓の音を感じていた。 あたたかかった。 謙太郎は響の髪に唇を押し当てて抱いたまま、動かなかった。 その日から夏休みだった。