校舎裏の入口に生徒がいる、と響が思った瞬間、

「ふざけないでよっ!」

と、女生徒の泣く声がした。

背の高い大柄な男子生徒。
響の方に背を向けている。

横を向いたままポケットに手を突っ込み、興味なさそうにつっ立っているのが見えた。

少し長めの髪が顔にかかっている。

内藤 謙太郎(ないとう けんたろう)だ)

と響は思った。

この高校では誰でも知っているような有名人だ。
地元の大きな総合病院の息子。
まさにこの学校の教師が一目置いているタイプだ。

生徒の間では、告白されれば誰とでも付き合うと噂されていて、この2年間でもしょっちゅう違う女生徒と一緒にいた。

次の人が告白したらすぐに彼女を捨てるらしい、全然反省しなくてチャラい、って女子達が話していたっけ。

(さっき見たクラスの名簿⋯⋯ )

謙太郎と同じクラス。

さっきの始業式の後の教室でも華やかな仲間、謙太郎の友達と数人の女子に囲まれてすごく目立っていた。

響は極力気配を消してるから、あんな華やかな人達には当然かかわろうとは思わなかった。