響は謙太郎を唆す


謙太郎はいつもの学校の時みたいに、当たり障りないかんじに戻っていた。
謙太郎は何でもない顔をしていた。

響は座ってすぐノートを開いて、

「勉強する!」

と言って始めたら謙太郎もノートを広げて勉強し始めた。
難しそうな、医学部志望だからなのか、見たことないような数学みたいな勉強をしている。
響は何だか上の空で、謙太郎を見ないようにして、でも全身で彼を感じていた。

しばらくしてチラッと謙太郎を見たら、涼しそうにシレッと教科書に目を落としている。こんな風に勉強をする人なんだなと思った。

左手で軽く顎を押さえて、右手はサラサラとノートに文字を綴る⋯⋯ 。

シルバーのブレスレットと、自分の腕のハンカチを見て、今まで、聞いたことのない謙太郎の話を急に聞きたくなった。