感情が体のまわりに溜まり、埋もれて、残滓が細い雨のように降っているように感じる。
薄く目をつむって開けたら、空の月。
それが黒い影になって、焦った謙太郎の顔が私を見下ろしていた⋯⋯ 。
はぁ、はぁ、
謙太郎も肩で荒い息をしていた。
「靴が⋯⋯ 」
と、謙太郎が言った。
「落ちていて、寝転んでる、から⋯⋯ 」
呼吸が続かずに、息を整える。
謙太郎は響の足元に立ったまま、両手を両膝について、しばらく荒く呼吸しながらそのまま黙っていた。
響は謙太郎が来たけれど、何だか現実感がなくて本物かなとぼんやりした気持だった。
いろいろ自分の中から流れ出して、感情や涙や、その澱の中にいるみたい。
砂に埋もれ横になって、少しでも動いたり考えたりしたら、また、あの痛みが来るのかと思うとじっとしていたかった。


