馬鹿みたい。
そんなに跡取りが欲しいなら、紗代子が自分で医者になればいい。
馬鹿みたいに謙太郎の腕にしがみついて。
それとも、そうやって、まるで期待され頼られるのは、男性は案外いい気持ちなんだろうか。
あんなにたくさんの人、家族が、謙太郎に後継だと期待して、祝福して、当然だと思っていて、思ったよりも謙太郎の決意したことは重いのかもしれない。
謙太郎が、怖いと、挫折するかもしれない、と言っていた意味が現実として理解した。
響の浅はかな励ましが、恥ずかしく思えた。
『唆す』⋯⋯ 。
と言われた事も、的外れではないような気がしてきた。
響は逃げるように家に帰った。


