響は謙太郎を唆す


それから響は、

「でも、どのみち今更はっきり嫌がられて、謙太郎に迷惑かけると思う」

と言った。

担任は、この子はまっすぐ真剣なんだな、と思った。
響の言葉は飾らなくて無駄がなくて本質だけ考えて言う。
公平にいろんな立場で考える。
あの母親は真逆だと言える。
飾って回りくどく、オブラートに上品に本質を隠し、その本質はただ自分中心で盲目的。
たまにいる、言葉の通じない厄介な保護者の更にその上を行くレベルの⋯⋯ 。

「戸波さんが悪かったとは思いませんでしたよ。私は」

思わず口から出た。
響は俯いて泣いたまま「はい」と言った。


響は、結局、謙太郎にこの日の事を言わなかった。
そう決めた。
それでも謙太郎が響を選んだら、響と謙太郎の母親の関係はどうなっていくのか⋯⋯ わからないだけ。
改善するように頑張るしかない。