響は謙太郎を唆す


ごちゃごちゃ2人でやっていたが、そのうち母親が、

「あー、もー、大変すぎて、疲れちゃったわ。
ほんと、嫌な気分!
帰りましょう、沙夜ちゃん」

と、一方的に立ち上がり始めた。

「あーん、立てないっ」とか、
「手につかまって下さいな!」とか、
「お見送りは結構よ、先生」とか、
「帰りしお茶飲みましょ」とか、
最後までゴタゴタして、響を無視して出て行った。
見送りを固辞された担任も、部屋に残された。

響は、心と体が固まっていくような気分がした。
押しつぶされそう、と、我慢出来ずに涙が落ちた。
こんなによく泣く人だったんだろうか、自分は。

「どうしよう、嫌われた」

と、涙声で言った。

あんなに響を毛嫌いしていた担任だったが、その言葉を聞いても、嫌味は言わずさすがに黙っていた。

戸波さんではなく、母親の方が非常識だと感じていたから。