響は謙太郎を唆す


響は、謙太郎が怒り出すのではないかと思ったが、穏やかにじっと黙って、何かを考えているみたいだった。
響も黙っていた。
謙太郎の足元を見たりしていた。

時々風が吹いて音もなく桜の花が落ちてくる。
花びらが2人の間にもヒラヒラと落ちてきた。
ふっと足元から顔を上げる。

謙太郎がじっとこちらを見ていた。

無言で見返したら謙太郎が困ったみたいに笑った。
響は何だか変な気持ちになった。

謙太郎の雰囲気と噂。

だけど響が言ったことをちゃんと考えているみたいなかんじ。
そして、今、実際に目の前にいる謙太郎について、さっきあんな態度で女性徒を傷つけていた人なのに、怖いとか嫌だとか、全然思わないのはなんでだろう、と考えた。

じっと見ていたら、少し強めに風が吹いたので、思わず上を見た。