それは、誰も謙太郎の気持ちを聞いてくれたり、思いやってもらった覚えがないからわかる。
ましてや謙太郎を本当に心配して怒ってくれるほど労力を払ってはくれない。
彼女達は、
私が傷ついた、
私の気持ちをどうしてくれるの?
と、本人ばかりを押し付けてきた。
謙太郎と付き合って自慢したい彼女達と、そんなら適当に遊ばせてもらうだけ、利害の一致、と軽く考えていたが、そんな事を重ねるごとに心が黒く汚れていくような気持ちがしていた。
でも俺が嫌な人間なんじゃなくて態度が嫌だって。
このままだと本当に嫌な人になってしまう、か。
目の前に凛とした彼女。
満開の桜の下。
謙太郎は、綺麗な、静謐な空気を胸に吸い込んだ。


