(百も承知ってどこかの親父が使いそうな表現だな)
と謙太郎は思った。
「興味なんてあるわけない。でも、たまたま通りかかって、聞いてしまって、すごく嫌な気分。不愉快なものを見てしまったかんじがしてる」
たまたま見てしまって不愉快で嫌で気になったって、と謙太郎は結構、ぐさっと傷ついた。
特にこんなフワフワした可愛い女に、核心をついて否定されたらすごく情けない。
「俺、不愉快⋯⋯ か⋯⋯ 」
真っ直ぐな視線がゆるがない。
だから本当にそう思ってる事を伝えてくる。
謙太郎は自分の方が目を晒してため息をついた。
彼女が続けて言った。
「あなたが不愉快な人かどうかは知らないけど、」
思わずまた、その子を見下ろした。
「ただ、今の態度が嫌だって思っただけ。
あんな事してたら、本当に嫌な人になってしまう」


