響は謙太郎を唆す


謙太郎は、はっきり言って凄んだと自分でも思った。

都合が悪いとこんな風に話す。

体の大きさや顔つきを利用して脅すみたいな言い方をする。

親の権力もあって、こうやって、教師も生徒たちも、謙太郎に何かを真剣に話したり、ましてや否定する人がいないようにしてきた。

皆、何か言いたそうに、でもおもねるような表情で、表面上取り繕って誤魔化す。

友達だって特別仲いいヤツ以外は普通に話す人もいなくなっているんだと知ってるのに。

でも、
その子は、謙太郎の脅しを全く無視した。
はっきりとした声で、自分の言葉を発した。

「あんな事、するべきじゃないと思う」

(さっきの事か?)

と謙太郎は思ったが、

(俺の何を知ってる、)

とも思った。

「それ、なんか関係あるか?おまえに?」

彼女の表情がキュッときつくなった。
それから謙太郎を真っ直ぐ見て言った。

「全く関係ないのは、百も承知だわ」