謙太郎の母親は、まるで何事もないように知らん顔で聞きたくない話を、全くなかったかのようにする。
こちらも無視しているならまだマシだったかもしれない
謙太郎の真剣な将来の悩みは、まるで全く存在せず、家はずっと小さい頃からと同じ状態だ。
当然、医者になるだけの長男だった。
母親は彼女の見たいようにしか謙太郎を見ない。
(そんな事言うはずない、後を継ぐ長男の謙太郎)だから結局(そんな事は言ってもいない)と本気で思っている。
小さい頃からと全くなんら変わらない、出来のいいお兄ちゃん。
素敵な日常。
たまらなかった。
ちょっと、精神科に見てもらうレベルなんじゃないかと、半ば本気で思ってきた。
ぐるぐるの円の中に閉じ込められ、全く出口がないような、もういっそこのまま、自慢の息子のまま、幸せな家族の日常の方が楽なんじゃないか、とチラッと考える。
そして、そんな自分が嫌になる。


