「花、明日、早くに出よう。
センターで診察するから。
花の子は…いや俺達の子供は俺が診る。
俺が取り上げるから。」

「はい! 寿貴先生、宜しくお願いします。」




そして翌朝、無事心音が確認された。
週数も7週と完全に合ってる。
まさか、我が子の心音を自分で確認できる日が来るとは思わなかった。

アレは破棄しよう。
俺にとって御守りの様な存在だったもの。
もう必要ないんだ。





◇◇





俺達に子供ができた事を家族に知らせた。
どちらの家族も大喜びで、祝賀ムード満載だった。
うちの父親だけは、週数を聞いて微妙な顔をしていたが…。
フライングがバレバレだったんだろう。
まあ、そこは大目に見てくれ。
待望の跡継ぎなんだから。

あの時、俺は産婦人科医として、さらにあり得ないミスをしていた。
アフターピルを飲むという選択肢もあったのだ。
初体験で舞い上がっていたし、実際にその時気付いたとしても、飲ませたかどうかわからないが。

やっぱり花との子供は欲しかったから。
自分勝手な話だが、今は結果オーライだと思っている。
俺達の宝だ。宝が出来たんだから。