俺が初めて抱こうとした女は、妊娠していたのだ。

産婦人科医を目指す俺にとって、父の病院で見るお腹の大きな妊婦は、神聖な存在だった。
他人の子を宿しているその母体を、俺は汚そうとした…。故意にではなくても、あの時彼女がトイレに駆け込まなければ、俺は母体を犯していた事になるのだ。

どうしてもその事が忘れられず、いざ、という段階になると、俺の分身は役を成さない。
つまり、勃たなければその後の行為に進む事は不可能なのだ。

もちろん、それが原因で彼女とは別れる。
その後、また違う彼女と同じ事を繰り返し、俺は女性と付き合う事を諦めた。

妊娠していた彼女との事。
その後付き合った彼女達との事。
それらの事は、トラウマとなって俺の心に大きな傷を残した。