「狼くんっ、おかえりなさい……!」



玄関の鍵を開ける音。
それから、ガチャリと扉のひらく音。



それらに、すばやく反応して玄関までぱたぱたと駆けた。


迎えにきた私を一瞥して、ため息をついて、無視。

そのまま靴を脱いであがってくる狼くん。




「狼くん、おかえりにはただいまって返すんですよ! わかってますか……っ?」

「……うるせえ」

「挨拶は、社会人の基本ですからね……!?」




狼くんにはぜひとも、しっかり挨拶できる社会人になってほしい……なんて謎目線で考える私に。

毎度のごとく絶対零度の眼差し。





「耳障りなんだけど」





せめて、もうちょっと冗談っぽく言ってほしいよ。


いつも思うけれど、狼くんの顔がマジすぎる。



いや……心底思ってるからこそのその表情なのだろうけれど、オブラートに包むということも覚えたほうがいいんじゃないかな、と私は思う。



それも立派な社会人になるには必要なことだもん。