「お弁当は、お母さん作?」

「っ、えと、うん……!そんな感じです!」



狼くんが、と言うわけにはいかなくて、あいまいに笑ってごまかした。

苦しまぎれだったけれど、道枝さんは疑う様子もなく「そっかあ」と頷く。



そして、自分のお弁当袋に手をかけた道枝さんは、次の瞬間「げっ」と眉をひそめた。

そんな彼女が袋のなかから取り出したのは、お箸のケース、だったんだけど……。




「真矢」




道枝さんが、少し離れたところでスマホを触りながらご飯を食べようとしているまやくんを、ちょいちょいと呼び寄せた。




「……? ゆっきー、何?」

「箸、また入れ替わってた」

「ああ」




軽くうなずいたまやくんは驚くわけでもなく、道枝さんの差し出した黒い箸のケースを受け取っている。


たしかに、男ものっぽいなって思ったけれど……。




それで、まやくんも自分のお弁当のところからお箸ケースを取り出して道枝さんに慣れた様子で手渡した。

今度のそれには、かわいいお花の模様が入っている。