もうこれ以上、許さない

「ここのパン、マジで旨いから食ってみ?
いや俺も(●●)落ち込んでてさ〜。
せっかくの味が台無しになるとこだったから助かったよ」
そう言いながら戻ってきて、あたしの横に腰を下ろした。

俺もって、あたしは落ち込んでるとか一言も言ってないけど…
なのに気付いて元気付けてくれてるんだと、胸がぎゅっとなる。


「どこのパン?」
嬉しくて、素直に隣に座ると。

「俺んちの近所にあるちっちゃなパン屋なんだけど、わかりにくいから今度連れてこっか?
はい、これ俺の名刺」

そこには、玉城フードサービスの営業という肩書。

その会社は最近県外にも進出し始めた、地元のファミレスチェーンで…
社名が物語るように、玉城さんはそこの社長令嬢だった。


「それで玉城さんと知り合ったんだ?」

「ちょっと違うかな。
芽衣とは高校が同じで仲良くなったんだけど、それも親父同士が知り合いだからでさ。
俺の親父、電気工事士の一人親方やってて。
玉城社長は色々仕事回してくれる、超お得意様なんだ。
けど俺が、芽衣の足怪我させてしまったから…
送り迎えする条件で、この会社で働く事になったんだ」

「…菊川くんって赤裸々だね」

「風人でいいよ。
で俺は、何て呼べばい?」