もうこれ以上、許さない

「ところで、言っとかなきゃいけない事があるんだけど…
あたしね?
今月いっぱいで、この町から離れようと思ってるの」

その途端。
マスター同様、一瞬固まって動揺を見せる誉。

「え、なんでっ…
ここにいると、辛いから?」

「まぁ、そんなとこかな」

駆け落ちがなくなったから、もう仕事を辞める必要はなくなったけど…
すでに後任が決まってたし。
早く立ち直るためにも、わざわざ辛い環境に身を置く必要はないからだ。


「それで、次はどこに行く気なんだ?」

「それはまだ、決まってないけど…」

「決まってないっ?
あと2週間もないのにっ?」

「うんでも、寮付きの派遣会社とか最短2日で入れるし…
面接のアポは入れてるから、なんとかなるよ」

だけど誉は深刻そうな顔で黙り込み…

「にしても、急だな…」
片手で額を覆って呟いた。

「…うん、報告が遅くなってごめんね」


それからも誉は、どこか上の空で…
なんとなく気まずい気持ちで食事を終えた。

すると帰りの車内で、思わぬ話が持ち掛けられる。


「あのさ…
この前の作り話、ほんとにしない?」

一瞬何の事かわからなかったそれは…
すぐに、風人にした誉と結婚する話だと思い付く。