「あぁ〜、離れたくない。
つーか俺がいない間に、変な男に言い寄られないか心配…」

「それ自分じゃん。
普通こんなとこで言い寄らないって」

「ひどっ!
俺だって月奈じゃなきゃ言い寄らないしっ」

「はいはい」

「うわ、また口だけだと思ってるしー」

そうやっていつもみたいに笑い合いながらも…
あたしは内心。
このまま会えなくなりそうな気がして、不安でいっぱいだった。


「じゃあ、行ってくる」

ちゃんと戻ってくるよね?
そう思って泣きそうになったけど…

「んっ、気をつけてねっ?」
必死に笑顔で送り出すと。

ふいに手を掴まれる。

「ちょ、風人っ…
見張られてたらヤバいって!」
慌ててダメ出しするも。

久しぶりに風人に触れられて、胸がぶわりと高揚して…
その温もりから離れたくない気持ちが勝ってしまう。

「お世話になりましたの握手、って事にするから」
いっそうぎゅっとする風人。

「っ、するからって…
相手がそう思ってくれなきゃ意味ないじゃん」

「ちゃんとそれっぽく締めくくるから、10秒だけ。
…そんな不安そうにしなくても、だいじょぶだから。
俺、速攻で身辺整理終わらせて、絶対戻って来るからさっ。
それまでいい子で、待っててくれる?」