もうこれ以上、許さない

胸が壊れそうなくらい鷲掴まれて。
泣き崩れるように顔を覆って(うつむ)くと…
優しく抱き包まれて、大事そうによしよしされる。

余計涙があふれ出す。


「好きだよ、月奈…
離れたくない。
だけど…
月奈にも全部捨てさせんのは、最低だよな。
逆にもっと、苦しめるだけだよなっ。
バカな事言って、ごめんっ…」
泣きそうな声で呟く風人。

「あたしの事はいいよっ」
とっさにそう首を横に振ると。

「俺は月奈の事しかないよ!」
すかさずそう返されて。

何度となく、また胸が鷲掴まれる。


ああもう、こんなんじゃ終わりに出来ないよ!
あたしだって離れたくないのにっ…
離れられないのに…

そう思ったら覚悟が決まった。


いいよ、風人が望むなら…
一緒にどこまでも逃げるよ。
何もかも捨てるよ。


「あたしなら、いいよ?
駆け落ちしよっか」
そう見上げると。

一瞬固まった風人が、視線を逸らして苦笑う。

「あのさっ…
そんな事言ったら俺、本気で連れさらうよ?」

「うん、いいよ。
さらってよ」

「っ、本気で言ってるっ?
俺が月奈の人生、全部奪うって事だよ?
悪いけど返さないよっ?」

「うん、全部あげるよ。
あたしも、風人さえいれば何もいらないもん」

その途端、力強く抱き締められて…
いっそうぎゅううと、きつくきつく締めつけられる。