呪イノ少女、鬼ノ少女

「あの時はっ……ただ、痛くて怖くて!!違う違う違う違う違う違う!!殺したくなんてなかった!殺したくなんてっ…」

「ん?殺したくない…?」


九音は唇に指を宛て、声に出して、薄く目を細めた。

それから雛子に届かない程度に小さく呟く。


「お前……『あの時』だけじゃないわね。ふぅん、少し興味が沸いた」


直感。

自身と同質の物を感じ取る。

同時に、嗜虐的な興味が湧く。

自分でも理解している、どうしようもなくタチの悪いモノ。

彼女は、どうしてもこの少女がこれほど歪んでしまった、その源を暴いてやりたくなってしまった。


「くっくっく」


邪悪に喉を鳴らし、雛子の頭を掴み上げる。

九音は左目に意識の全てを集中させ、そして『視』た。



鈍い痛みを伴いながら、頭に巻き戻しの映像が…いや、断片的な連続した写真が流れ込んで来る。

九音は意識を凝らし、無数に流れていく写真の中から目的の記憶を捜す。


---見付けた。


幼い雛子だ。

場所は火群ではない、だがどこかの町。


周囲に広がるのは、血。

血。

血。

血。

血。

血。


赤い海に散らばる、何のものかも分からない肉片。


「ちッ…」


じぐりと、右目に痛みが走る。

やはり本来とは違う用途に使うと、視神経が焼き切れるようで辛い。


だが、それでも九音は『視』ることを止めなかった。


雛子は鎖に繋がれている。

四肢には深く、無惨に打ち込まれた封の杭。


泣いても、

叫んでも、

血を吐いても、


雛子を囲む者達は、誰一人として拷問の手を緩めようとはしない。

時間だけが、ただ虚しく流れていく。

しかし、やがて誰かが雛子にそっと手を差し延べた。


誰だ?

雛子の意識が霞んでいるせいで、相手の顔は見えない。


いや、これは……


ギッ!


「ぐっ!」


瞳の奥に電光が閃いた。

集中が途切れ、頭に流れ込んでいた映像も消えてしまう。