呪イノ少女、鬼ノ少女

「なっ……私は本当に!」


雛子は勢いよく立ち上がって、九音に詰め寄った。

が、九音はその鼻先に人差し指を立てて、チッチッチッと左右に振った。


「隠しても無駄。私はちゃんと見ていたから」

「み、見ていたって!やっぱり『力』を使ったんじゃないですか!」

「いちいち五月蝿い。今更一回や二回使った所で、何も変わりはしないわよ。こうなってしまっては…」


そうして九音は、おもむろに右目を隠す前髪をかき上げた。


「っ…」


雛子は小さく叫んだ。

そこには黒曜石かと見紛うばかりの、光沢を放った漆黒の瞳があった。


その瞳の中には、グルグルと腐泥のような邪悪な物が蠢いている。

雛子は咄嗟に目を逸らした。


でなければこの邪気に満ちた瞳に、正気を狂わされかねなかったからだ。


「ご当主、その目は…」

「これが代償よ」

「じゃ、じゃあ、ご当主はもう…」


雛子は九音の状態を察し、瞳を歪めて口許を押さえた。


「まだよ。もう幾らも暇はないけれど、けれど問題は無いわ」