呪イノ少女、鬼ノ少女

女はそのまま身を翻らせると、夜の藍が支配し始めた昏い森の中へと消えていった。


「ちっ…逃がしたわね」

「ごめん、母さん」


女が消えていった森を睨みながら、茜は悔しそうに舌打ちをした。

雛子も大和と呼ばれた少年も、すまなそうに頭を垂れたが、そうしてももう遅い。


女が消えていった森は、もう何事も無かったかのように静寂を取り戻している。


「澪っ…澪…」


そんな三人に目もくれず、九音はぐったりと倒れた澪に駆け寄って抱き起こして必死に呼びかけた。


だが澪の反応はない。


まさか…、と一瞬心臓が止まりかけたが、どうやら気を失っているだけのようだ。


どうやら緊張の糸が切れたらしい。

先ほどの事など、まるで無かった事のように、安らかな寝息を立てている。


厳しい顔をしていた九音も愛する者が無事と分かって、長い安堵の溜め息を漏らした。


「ごめんねー、九音ちゃん。間抜けな雛のせいで、逃がしちゃったわ」


さっきまで獣のような顔をしていたのに、もう普段のへラっとした表情の茜に戻っている。


「誰が間抜けよ!母さんが気付かれたせいでしょっ」


すかさず雛子が噛み付くと、茜は片手で押さえてしれっと返す。


「あー、やだねー。人のせいにするなんて」

「ぐっ…、そっちが最初に言ったくせに」


そんな二人に、九音はゆっくりと首を振って、眠ってしまった澪の体をぎゅっと抱き締めた。


「今は止しましょう…。澪が無事なら、それでいいわ…」







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