呪イノ少女、鬼ノ少女

女は澪の体を掴んで引き寄せて、体の前で拘束する。


「っ…そうよ!だから、離してもらえるかしら?」


ギリッ…と、離れた澪の耳にまで聞こえるほど、大きな歯ぎしり。

眉間に深い皺を刻み、憎悪の黒い光を宿した瞳で女を睨む。


「嫌と言ったら?」


女は澪の首に腕を回し、九音に挑発的な笑みを向けながら、その骨張った指の腹で撫でた。


「…珠祭の名の元に、地獄の底に叩き落してやるわ」

「ふふ…さすがは珠祭の『当主』と言ったところか…むっ?」


突然女は澪から手を離したかと思うと、獣じみた俊敏な動きで、その場から飛び上がった。


「ちっ、茜!!」

「逃がすものですか!」


一瞬前まで女が立っていた場所に、茜が文字通り降って来た。


もはや何が起こったのかなど、澪には分からない。

ただ、目が合った茜の目が獰猛な虎のような目をしていた事にだけ気付けた。


「雛、大和、そっちいったよ!」

「分かってます!」


飛びずさった女の背後には、すでに雛子と刀を構えた少年が待ち受けていた。


雛子も少年も迷いなど何一つ見せずに、女の無防備な背中に爪と刀を振り下ろす。


―――しかし。


『なっ…!?』


二人の驚嘆の声が同時に上がる。


まるで背中に目が付いているかのように、女が二人の攻撃を軽々と躱したのだ。