呪イノ少女、鬼ノ少女

女は、澪の首に牙を押しつけたまま肌の上を這わせる。

ひと思いに噛まずに、まるで澪の恐怖を煽るよう、何度も何度も、執拗に澪の肌の上を、牙を滑らせる。


「あっ…く」


そうして、ついに女の顎に力が込められた。


…その時


「澪っ!!」


牙が肌に食い込む、その刹那……九音の叫びが響いた。

辺りを支配する鉛のような空気を切り裂いて、その声は澪にはっきりと届いた。


「九音…さん?」

「鬼がっ…!!澪から離れなさい…っ」


呼吸を乱しながらも、その場に現れた九音は、女に向かって怒りを露にした。


だが、女はそんな言葉には従うことなく、澪に牙を触れさせたまま九音を睨んだ。


…怨嗟渦巻く、地獄のような瞳で。


それは見た者を恐怖に狂わせかねないほど、妖しく、そして危うい美しさを備えていた。


「…惜しい事だ」


そこでようやく女は声を発した。


「もう少しだったのだが」


女の声は、聴いた者の耳を潰しそうなほど、醜く掠れている。

だが、それなのにどこか淫靡な響きを持つ、妖しい音だった。


女は澪から離れると、ゆらりと立ち上がり、そうして、生気のない眼で九音の姿を見据えた。


「何だ、これはそなたの物だったか?」