呪イノ少女、鬼ノ少女

そんな澪の目の前に、女の裸足が歩み寄った。


「い…や…っ」


涙で瞳を潤ませ、その裸足の主を見上げる。

だが、女の顔は霞んでぼんやりとしており、ただその口許だけが、妖しく吊り上がっている事だけは分かる。


「やめて…来ないでっ!」


焼け付くように痛む喉を押さえ、澪は震える声を搾り出した。


「……やめ、て…!来ないで…」


後ろ手をついて、這いつくばって逃げる澪を楽しむように、女はゆっくりと、一歩ずつ迫る。


「きゃっ…!」


そうして、女は泣き喚く澪の肩を掴んで地面に押さえ付けると、そのまま上にのし掛かり、もがく澪の頭を固定した。


「はっ、離して…!!助けて……誰かっ!」


しかしその叫びは血の色を思わせる、禍々しい空に虚しく吸い込まれて行く。


どれだけ喚き、暴れたところで、女の力は少しも緩まない。


そして突然女が、澪の首に舌を這わせた。


「っ…な、何を!?」


嫌な予感が胸の奥で疼いた。

澪の視線の先、女の口許に鈍い銀色に光る歯が映る。


いや、それは歯というには少しばかり凶悪な形をしていた。

言うならば、獣の牙。


獲物を引き裂き、咀嚼するための、原初の刃物。


「…なっ…」


ぬらりと、濡れた牙が澪の柔らかい肌に触れる。

ドクン…ドクン…


耳の痛い程に血の流れる音が響いていた。