―――幽霊か…?
そう思ったら、急に背筋を冷たい感覚がぞわぞわっと這いずり回った。
「冗談や、やめてよ……ひゃっ!?」
一歩後ろに下がったところで、後ろにいた誰かにぶつかってしまった。
…誰ががいる気配などしなかったというのに、だ。
顔からサーッと血の気が引いていく。
なのに、控えめな胸の奥の心臓は今にも口から飛び出しそうなほどバクバクと飛び跳ねている。
―――突然
ガッ…
後ろから澪の肩を思い切り掴まれた。
「…っ!」
心臓が更に一段強く鼓動を打った。
澪は恐る恐る視線を移し、そして死人の如く青白い手が肩をがっしりと掴んでいるのを見た。
細く、長い指がギリギリと肩に食い込んでいる。
「痛っ…ぃ…」
肩を砕いてしまいそうな鈍い痛みに澪は悲鳴を上げた。
見た目は痩せこけた、骨と皮だけの細い腕なのに、恐ろしいほどの力で澪の肩が軋む程に握っているのだ。
「痛っ、……へ?」
肩が壊れる…そう思った時、急に掴んでいた手から力が抜けた。
パニックに陥っていた澪だが、急に解放されて、一瞬冷静さを取り戻して首を傾げた。
だが、解放されたというのは誤りだった。
いきなり体ごと振り向かされたかと思うと、ぬっと伸びて来た腕が澪の首を掴んで、そのまま後ろに押し倒したのだ。
運動音痴の澪はとっさの受け身など取れずに、したたかに後頭部を地面に打ち付けてしまう。
「いっ…つ…」
目の奥で火花が散った。
吐き気が喉奥から込み上げて来る程の痛みが頭全体に広がる。
あまりの激痛に悲鳴を上げたいのに、喉を締め付けられているせいで叶わない。


