呪イノ少女、鬼ノ少女

九音のいった通り、裏の勝手口が風雨で壊れてしまっていた為に、そこから中に入る事が出来た。

九音の機嫌も損なわれずに済んだようだ。


部屋の中は暗い。

わずかに入ってくる光に照らされて、どうやらそこが台所ということは分かった。


「汚いわ」

「ですね」


割れた窓から吹き込んだ葉っぱやら砂埃で、部屋は汚れ切っていた。

だが元々はキチンと片付けられていたのだろう。
食器や調理器具は綺麗に片付けられている。


「お父さん、ここで料理したりしたのかな…」


埃を被ったシンクを指でなぞる。

料理が得意だったから、きっとここを使って毎日を過ごしていたのだろう。


「澪はお父様のことを愛していたの?」

「…ええ」


父は仕事に追われてばかりの忙しい人だった。

一言も交わせない日が一週間以上続いた事もあるくらいに。

授業参観に来てもらったこともなければ、幼い頃からどこかに連れて行ってもらったこともない。

親らしい事なんて何一つしてもらった事は無いように思える。


それでも澪にとっては唯一の家族で、心を許せる人だった。

優しくて、暖かい人だった。